3月11日に考える「災害リハビリテーション」と作業療法
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こんにちは。教員の柴橋です。
本日は3月11日、東日本大震災を思い起こす日です。日本では地震や豪雨などの自然災害が多く、被災地では命を守る医療だけでなく、その後の生活を支える支援も非常に重要になります。その中で重要な役割を担うのが災害リハビリテーションです。
災害時に必要とされるリハビリテーション
災害が発生すると、避難所生活や環境の変化によって、高齢者や障害のある方の体力や生活機能が急激に低下することがあります。長時間の避難生活により、歩く力が弱くなる「生活不活発病」や、身体機能の低下が問題になることも少なくありません。
こうした問題を防ぐため、被災地ではリハビリテーション専門職がチームで支援を行います。被災地に派遣される代表的な組織として、医療チームのDMAT(災害派遣医療チーム)、医師を中心としたJMAT(日本医師会災害医療チーム)、そしてリハビリ専門職が中心となるJRAT(日本災害リハビリテーション支援協会)があります。
JRATには、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など多くの専門職が参加し、避難所や仮設住宅などで被災者の生活を支える活動を行っています。
JRAT(一般社団法人日本災害リハビリテーション支援協会)については、以下の公式サイトをご覧ください。
JRAT(一般社団法人日本災害リハビリテーション支援協会)HPへのリンク
作業療法士の役割
作業療法士は「生活を支える専門職」です。災害現場では、単に身体機能の回復を目指すだけではなく、被災された方が再び日常生活を取り戻すことを目標に支援を行います。災害によって住環境や生活環境が大きく変わると、これまで当たり前にできていた生活動作が難しくなることがあります。特に高齢者や障害のある方にとっては、避難所生活が身体的にも精神的にも大きな負担となることがあります。
作業療法士は、こうした状況の中で「その人がその人らしく生活できるようにする」ための支援を行います。例えば、避難所で安全に移動できるように通路やベッド周囲の環境を整えたり、段差やスペースの制限がある場所でも生活動作(着替え、食事、トイレなど)が行えるよう工夫を提案したりします。また、長期間の避難生活では身体活動量が低下しやすく、筋力や体力の低下が問題になることがあります。そのため、体を動かす活動を取り入れたり、日常生活の中で無理なく身体を動かせる方法を一緒に考えたりすることも重要な役割です。
さらに、災害によって大きな喪失体験や不安を抱える方も少なくありません。作業療法では、趣味などの軽い作業活動、地域の交流活動などを通して、人が「何かをする」ことを支援します。こうした活動は、心の回復や人とのつながりを取り戻すきっかけになることもあります。
全国で広がる災害リハビリの取り組み
日本では、災害リハビリテーションの体制づくりが全国規模で進められています。大規模災害の際には、医師や看護師による医療支援だけでなく、リハビリテーション専門職による生活支援も重要になります。そのため、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが連携して支援を行う仕組みが整備されてきました。
その中心的な組織の一つが、JRATです。JRATは、災害時にリハビリ専門職を被災地へ派遣し、避難所や仮設住宅などで生活機能の低下を防ぐ支援を行っています。また、平時から研修会や訓練を実施し、災害時に迅速に活動できる体制づくりが進められています。
2024年1月に発生した能登半島地震でも、災害リハビリテーションの活動が行われました。避難所生活が長期化する中で、高齢者を中心に身体機能の低下や「生活不活発病」が懸念されました。JRATを通じて、全国から900人以上の作業療法士などの専門職が被災地で支援活動にあたったと報じられています。
また、こうした経験を踏まえ、厚生労働省は災害時にリハビリ専門職を迅速に派遣できる体制づくりを進めています。事前登録制度の整備や研修・訓練の実施などにより、被災者の健康状態の悪化を防ぐ支援体制の強化が検討されています。
作業療法士もこうした研修や活動に参加し、災害時に必要となる知識や技術を学んでいます。災害医療は命を守る医療だけでなく、その後の生活を支える支援があってこそ成り立つものです。作業療法士は、人の生活に寄り添う専門職として、被災された方が再び地域で生活を続けていけるよう支援しています。
東日本大震災から年月が経ちましたが、日本では現在も地震や豪雨などの自然災害が発生しています。災害医療というと命を救う医療が注目されますが、その後の生活を支える支援も欠かせません。災害の現場でも、人々の生活を守るリハビリテーションが行われています。この記事をきっかけに、災害医療や作業療法という仕事について、少しでも知っていただければ幸いです。






